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YANAI TAX OFFICE ・ CHIGASAKI / SHONAN

freee会計で月次決算を3営業日で締める──仮締めの工程表と、確定が遅れる会社の条件

「月次決算が遅くて経営判断に使えない」というご相談をよく頂きます。月中の処理・担当分担・システム設計を整えれば短縮できる会社は多いのですが、資料が届く時期のように社内の努力だけでは縮められない要因もあります。カード決済の比率が高い会社は、同期に依存する限りDay1に明細が存在しません。

そこで先に用語を分けます。この記事の「3営業日で締める」は、あらかじめ定めた基準に基づき、経営判断に使える月次の速報値をDay3までに作ることを指します。未着の請求書などを概算で計上した場合は仮締めであり、実額が判明して差額を反映するまでは確定ではありません。この区別を曖昧にしたまま「確定」と呼ぶと、翌月に数字が動いたときに信用を失います。

自社はどの型か

会社は3つに分かれます。まずここを決めてから工程を組みます。

状態締め方
A 確定できる前月取引をDay1までに取得でき、棚卸・未着請求もDay2までに確定するDay3で確定
B 仮締めできる一部の資料が遅れるが、契約・発注・検収などから合理的に見積もれるDay3で速報値、実額取得後に確定
C 資料待ち金額も履行状況も把握できない取引がある主要資料が揃う日を基準に確定締め日を設定

3営業日を達成できないことは運用不良ではありません。Bなら二段階方式、Cなら締め日そのものを資料の到着に合わせるのが正しい設計です。単純に3営業日を5営業日へ延ばしても、翌月10日に届く請求書は5営業日目にも届いていません。

当事務所が拝見している範囲でも、A型は多数派ではありません。多くはB型で、「どこを概算にして、いつ確定させるか」を決めることが実質的な設計になります。

Day1を迎える前に整っていること

締め作業が長いのではなく、月中に溜めたものを月初に処理していることがよくあります。

前提条件できていないと何が起きるか
自動登録ルールが整備され、同じ支出が毎月同じ科目・税区分に入る月初に「これは何の費用か」の判断と修正が発生する
口座・カードが実在の単位で登録され、連携が生きている残高が合わず、原因調査に一日かかる
経費精算が月中に都度申請されている月末にまとめて出てきて、承認待ちで止まる
売上の根拠(納品・検収・役務提供の完了情報)が翌月第1営業日までに経理へ集まる売上の期間帰属を確認できない

とくに1つ目です。実際に起きているのは自動登録ルールが会社ごとに整備されておらず、同じ支出が月によって違う科目に入るという状態です。ルールは会社の実態ごとに作るもので、他社の設定をそのまま持ち込んでも合いません。

締めの工程表

この工程表を使えるのは前記のA・Bの会社です。 Cの会社は、Day1の段階で取得できない資料が確定するため、締め日を別に設定してください。「誰が」を空欄にしないのが要点で、社内と顧問側の担当が曖昧な工程が1つあると、そこで止まります。なお社内と顧問の分担は契約内容によって異なります。ここでは分担の一例として示します。

誰がやること完了判定
Day1 午前社内ホーム画面から全口座を手動で同期。口座ごとに、前月取引を同期・CSV・社内記録のどれで把握するかを確認する取得手段が口座ごとに確定し、取得できない項目が例外一覧に記録されている
Day1 午後社内未処理明細の登録。自動登録分を含め、重複・日付・金額・勘定科目・税区分・取引先・証憑との対応を確認未処理明細ゼロ。重複チェックと例外取引のレビューが完了
Day2 午前社内納品・検収・役務提供の完了状況から売上の期間帰属を確認(未請求売上・前受け・返品値引きを含む)。仕入・外注の未払計上未請求・前受けを含めたカットオフ確認が完了
Day2 午後社内当月分の経費申請を締切って承認・計上。未申請の有無を各部門に確認。現金・小口の登録承認待ちゼロ。未申請確認と、締切後申請の処理ルールが明確
Day3 午前顧問残高照合(下表)と前月比の異常値の洗い出し、確認事項の一覧化各勘定の根拠資料と帳簿残高が一致。未解決差額は金額・原因・担当・解消期限を記録
Day3 午後経理責任者・経営者未解決項目と概算計上額を確認して仮締めまたは確定を承認承認の記録が残っている

業種によっては工程の追加が要ります。 給与・社会保険・源泉所得税、減価償却とリース、棚卸・仕掛品・売上原価、前払費用・前受金、借入金の元本と利息、法人カードの私的利用や役員立替、インボイス関連の確認、店舗別・部門別の集計などです。この表はすべての会社に共通する最低限の骨格で、自社の決算整理項目を足さないまま「確定」と呼んではいけません。

締め後に資料が届いた場合の修正基準(いくら以上なら遡って直し、いくら未満なら翌月処理にするか)も先に決めておきます。

残高照合は科目ごとに照合先が違う

「実残と一致」とまとめて書くと、何と突き合わせるのかが分からなくなります。

科目照合先
預金月末時点の金融機関残高
クレジットカード利用明細・請求確定額・支払記録(未確定利用額を区分する)
売掛金・買掛金相手先別残高と、請求・入出金・相殺・消込状況
預り金給与台帳等の発生資料と納付記録

差異は原則として原因を特定し、修正してから締めます。金額を把握しただけで先に進むと、残高は正しくなりません。Day3までに解消できない場合は、重要性基準に照らして締めを保留するか、未解決項目として金額・影響・担当者・解消期限を明示したうえで仮締めとします。

概算で計上するときの条件

「請求書が届いていないから計上できない」は誤りです。請求書が未着でも、納品・検収・契約・発注書・作業報告などから当月に発生した費用を合理的に把握できれば未払計上できます。逆に、請求書が届いただけで当月の費用になるわけでもありません。

ただし「毎月ほぼ同額だから」は計上根拠として弱すぎます。未履行・作業量の変動・契約変更・解約があれば、費用と債務を過大に計上します。概算を使うなら次を先に決めてください。

  • 当月中に役務提供や納品が完了していることを確認する
  • 契約額・発注額・検収記録など合理的な根拠から金額を見積もる
  • 対象範囲、算定方法、重要性の基準、翌月の実額照合と差額処理をあらかじめルール化する
  • 概算を含む段階は仮締めとし、損金算入時期や消費税区分は証憑の取得後に別途確認する

経営管理用の概算処理と、税務上の取扱いは同じではありません。ここを混ぜないことが肝心です。

口座連携は「Day1の手動同期」から始める

誤解が多いところです。freeeの自動同期は日次ではありません。 ヘルプは同期のタイミングを「毎週2回程度、週の初めと終わり付近」とし、さらに「特に月末月初は混雑により、自動同期が実行されない場合があり」と説明しています。締めたいタイミングにこそ落ちる可能性があるということです。だからDay1の朝に手動で回します。

CSVでの明細アップロードも避ける必要はありません。同期に対応していない金融機関、1回の同期で取り込める件数に上限がある金融機関、まだ取得できていない明細については、freee公式が案内する正規の補完手段です。ただし重複防止を手順に入れてください。CSVで補完した対象期間と対象口座を記録し、後日同期された明細との重複を必ず確認します。未確定明細を使った場合は仮計上とし、確定後に金額・日付・加盟店名を再照合します。

そして、ヘルプは「取り込まれているデータが完全であるかどうか、月に1回程度は同期元のサービスと照らし合わせて確認」するよう求めています。完全性の確認は利用者側の責任です。年度締めをして年度を切り替えると前の年度の明細は取り込まれなくなる点にも注意してください。

カードについては、「確定を待ってからまとめて取り込む」口座と「未確定でも明細データを取得できる」口座に分かれ、実際のカード利用日から明細の取得までに2ヶ月前後かかる場合があるとされています。前者の口座を使っている会社は、同期に依存する限りDay1で明細が存在しません。カード会社のサイトからCSVを先に取得する運用に切り替えるか、B型として仮締めを選ぶことになります。

勘定科目と口座・タグの設計

締めを速くする設計は、月初ではなく初期設定で決まります。

項目推奨粒度実務のポイント
勘定科目決算書表示・税務処理・経営管理に必要な範囲細分化しすぎると自動登録ルールが破綻する。決算整理や税区分の確認に必要な区分は残す
口座銀行口座・カードを実在の単位で1対1に登録freeeに「補助科目」というマスタはなく、口座名が補助科目に相当します。連携の登録単位と実際の口座を一致させる
取引先・品目・部門などのタグ集計軸として必要なものだけ主に検索・集計の軸。残高照合が必要な科目まで一律にタグで代替しない
部門管理会計で必要な単位深さより先にプランの上限を確認

売掛金・買掛金の相手先別管理、借入金、役員勘定のように残高照合と決済管理が要る科目は、タグ集計だけに頼らず、科目ごとに口座・取引先・決済管理のどれで持つかを決めます。

部門は「3階層以上は重い」のではなく、プランによって作れる階層数が違います。法人スタンダード(旧ベーシック)・個人プレミアムは2階層まで、法人アドバンス以上は最大5階層、子部門は1つの親につき100までです。実務で効くのは階層数より次の2点で、親部門として設定した部門は取引登録や配賦の対象にできないこと、すでに取引や振替伝票で使っている部門は後から親部門にできないことです。階層化には取引の付け替えが要るので、部門設計は最初に決め切ります。

経費精算は月中に流す

経費精算はfreee会計の経費精算機能を使い、従業員がスマホでレシートを撮って都度申請できる状態にします。Day2に必要なのは当月分の承認と計上で、従業員への振込みは社内の精算日程に従って構いません。あわせて未申請の有無を各部門に確認し、重要な未申請分は根拠に基づいて未払計上します。

プランによって使える範囲が違います。ヘルプの対応表では、ひとり法人(旧ミニマム)は利用不可、法人スターター・スタンダードは「承認者を指定」する形の申請のみ、申請経路の設定まで使えるのはアドバンス以上(個人はプレミアム)です。規模が大きい場合はfreee経費精算やfreee支出管理(経費精算Plus/Full)が候補になります。

料金も設計に関わります。1ヶ月の間に一度でも利用(申請または承認)すると、基本料金とは別に利用した人数分の利用料が発生します。freee会計スターター・スタンダードは1ユーザーあたり月300円、アドバンス・エンタープライズ・freee支出管理Full・経費精算Plusは月650円です。まず対象者を絞って始めるほうが現実的です。

なおfreee人事労務に経費精算の機能はありません(勤怠・給与計算・年末調整が担当範囲で、経費精算の内容を給与明細へ反映する連携のみ関わります)。

よくある詰まりどころ

  • カード連携と証憑保存は別の作業です:明細が取り込まれていても、領収書・請求書のデータを保存したことにはなりません。メールやECで受け取った電子取引データの保存義務は電子帳簿保存法、中小企業がやることは3つで扱っています
  • 二重計上:残高が合わない原因の多くはこれです。同期で取得済みの明細を手入力でも登録している、CSVで先に入れた明細が後日同期でも入った、というパターンが典型です
  • 前月比の急変を即「異常」と判断する:仕入の急減を異常値として報告しかけたものの、原因は振込日ベースの記帳で、前月に2回分がまとまっていただけ──という類のことが実際に起きます。周期発注や中間納付でも同じ形になります。記帳の担当者に確認してから経営者に上げるほうが、無駄な調査が減ります
  • 締めるだけで読まない:3営業日で締まっても、試算表のどこを見るかが決まっていなければ経営判断は変わりません。見るべき順序は月次試算表、社長はどこを3分で見るべきかで、締めた数字を毎月の面談でどう使うかは月次面談の進め方でご覧いただけます

freeeの画面構成やメニュー名、プラン別の上限・料金は改訂され得るため、操作と費用は最新の画面でご確認ください。

この記事の要点

  • 「3営業日で締める」は経営判断に使える速報値をDay3までに作ること。概算を含むなら仮締めで、実額を反映するまで確定ではない。会社はA 確定できる/B 仮締めできる/C 資料待ちに分かれ、届かないことは運用不良ではない
  • freeeの自動同期は日次ではなく「毎週2回程度」で、月末月初は実行されないことがある。Day1の朝に手動で全口座を同期する。CSVは正規の補完手段だが、後日同期との重複確認を手順に入れる
  • カード明細は利用から取得まで2ヶ月前後かかる場合がある。「確定を待ってからまとめて取り込む」口座では、同期に依存する限りDay1に明細が存在しない
  • 売上は請求書の発行日ではなく、納品・検収・役務提供の完了で期間帰属を判断する。請求書が未着でも合理的に把握できれば未払計上できるが、「毎月ほぼ同額だから」は根拠にならない。概算は対象・算定方法・重要性基準・翌月の洗い替えをルール化してから使う
  • freeeに「補助科目」というマスタはなく、口座名が補助科目に相当する。部門の階層数はプランの上限(スタンダード・個人プレミアムは2階層、アドバンス以上は最大5階層)で、親部門として設定した部門は取引登録や配賦の対象外
  • 経費精算はfreee会計の機能(freee人事労務にはない)。ひとり法人は利用不可、申請経路の設定はアドバンス以上。一度でも使うと1ユーザーあたり月300円/650円の利用料が別途発生する

出典


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