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YANAI TAX OFFICE ・ CHIGASAKI / SHONAN

令和8年度税制改正、中小法人に効くのはどれか──適用開始時期つきの一覧

令和8年度税制改正のうち、中小法人の実務に効く項目を一覧にしました。詳しい制度は個別の記事へ送りますので、まず「自社に関係するのはどれか」「いつから効くのか」を確認する入口としてお使いください。

先に1点だけ。ここでいう「中小企業」は日常語ではなく、**制度ごとに定義された「中小企業者等」**です。従業員数や売上だけでは決まらず、資本金の額や大規模法人との資本関係などで判定します。自社が該当するかは制度ごとに確認が必要です。

令和8年度改正で変わるもの

「いつから」の欄に2種類ある点にご注意ください。資産を買った日で判定するものと、事業年度の初日で判定するものがあり、決算期によって効き始める時期が変わります。

項目何が変わるかいつから
少額減価償却資産の特例30万円未満 → 40万円未満(適用期限も3年延長)。年300万円の上限は変わりません資産を取得した日が令和8年4月1日以後
賃上げ促進税制中小企業向けは教育訓練費の上乗せが廃止。それ以外は現行どおり事業年度の初日が令和8年4月1日以後
インボイスの経過措置免税事業者からの仕入れで控除できる割合が 80% → 70%課税期間の初日が令和8年10月1日以後
設備投資の税制新制度の創設と、対象になる工具等の基準を30万円 → 40万円へ(下記)制度により異なります
防衛特別法人税令和6年度改正で創設された制度の適用が始まります事業年度の初日が令和8年4月1日以後

少額減価償却資産が40万円未満に

中小法人がいちばん頻繁に使う特例です。30万円未満 → 40万円未満に引き上げられ、適用期限も3年延長されました。年間300万円の上限は変わりません。

実務で気をつける点が2つあります。

1つ目は判定のタイミングです。 基準になるのは資産を取得した日なので、令和8年4月1日をまたぐ事業年度では、同じ期の中に30万円未満基準の資産と40万円未満基準の資産が混在します。期中の取得日を資産ごとに確認してください。

2つ目は償却資産税です。 損金にする時期だけで決めると、固定資産税(償却資産)の負担を見落とします。

  • 取得価額20万円未満:少額特例のほかに、一括償却資産として3年で均等償却する方法も選べます。少額特例は償却資産税の申告対象になり、一括償却資産は対象外です
  • 20万円以上40万円未満:一括償却資産にはできないので、少額特例か通常の減価償却かの比較になります

なお対象となる法人から、常時使用する従業員数が400人を超える法人が除かれました(改正前は500人超)。

賃上げ促進税制は「教育訓練費の上乗せ」だけが変わる

中小企業向けの措置は、教育訓練費に係る上乗せ措置が廃止されたことを除いて、現行制度が維持されます。給与等の支給額が前年比+1.5%以上で15%、+2.5%以上で30%という控除率は変わらず、子育てとの両立支援等の上乗せ(+5%)も残ります

なお、全法人向けの措置は令和8年3月31日で廃止され、中堅企業向け(従業員2,000人以下など)は要件が厳しくなったうえで教育訓練費の上乗せも廃止されました。規模区分ごとの違いは中小企業の賃上げ促進税制はどう変わるかで扱っています。

実務への影響は1点だけです。教育訓練費で上乗せを取る前提で節税を見込んでいた場合、控除率の見込みが下がります。 期中に研修費を積み上げる計画があるなら、早めに数字を見直してください。適用は令和8年4月1日以後に開始する事業年度からです。

設備投資は「制度を選ぶ前」に相談してください

今年の改正で設備投資の新しい制度ができましたが、中小法人にとって重要なのは新制度より次の3点です。

1. いま使える制度は、令和9年3月31日までに取得・事業供用が必要です。

制度できること
中小企業投資促進税制取得価額の30%を特別償却、または7%の税額控除(税額控除は資本金3,000万円以下の法人のみ)
中小企業経営強化税制即時償却(全額を一度に損金)、または7〜10%の税額控除

延長されるかどうかは決まっていません。ただし、税制の期限を理由に投資を前倒しするのは本末転倒です。投資の採算と資金繰りを先に置いて判断してください。

2. 「全額を一度に落とす」には、買う前の手続が要ります。

即時償却ができるのは経営強化税制のほうで、こちらは経営力向上計画の認定という手続が必要です。設備を買ってから申告のときに選ぶ、ということはできません。 原則として、設備を取得する前に証明書などを準備して計画の認定を受ける、という順序になります。取得を先行させる場合に認められる手続にも期限があります。

3. 新しい制度は、規模の大きい投資が前提です。

今年創設された特定生産性向上設備等投資促進税制は、前提となる産業競争力強化法等の改正法が令和8年7月31日に施行されました。ただし投資計画に記載する設備の取得価額の合計が5億円以上(中小企業者等の場合)といった規模が前提で、通常の設備更新では届かないことが多い制度です。しかもこの計画の確認を受けると、その期間中は経営強化税制が使えなくなります。

設備投資の予定があるなら、発注の前にご相談ください。 どの制度が使えるかは、資産の種類、業種、手続の順序で変わります。逆に言えば、買ってしまってからではどうにもならない部分があるというのが、この分野でいちばん大事な点です。

消費税は控除できる割合が下がる

免税事業者からの仕入れについて、これまで80%を控除できていた経過措置が**70%**に下がります。

課税仕入れを行った日控除できる割合
令和8年10月1日〜令和10年9月30日70%
令和10年10月1日〜令和12年9月30日50%
令和12年10月1日〜令和13年9月30日30%

あわせて、一の取引先からの課税仕入れが年1億円を超える場合、超えた部分はこの経過措置を使えなくなります(現行は10億円)。

この改正が適用されるのは、令和8年10月1日以後に開始する課税期間からです。割合そのものは仕入れを行った日で区分されますが、改正が効き始めるのは課税期間の初日で決まるため、決算期によって切り替わる時期が違います。自社への影響額の見方はインボイス経過措置の割合と実務対応で扱っています。

そのほか押さえておく項目

  • 防衛特別法人税:令和6年度改正で創設され、令和8年4月1日以後開始事業年度から適用が始まります。所得から500万円を引く制度ではありません。 基準法人税額(税額控除前の法人税額)から年500万円を控除した残額に4%を乗じます。実務の影響は防衛特別法人税の中小企業への影響で扱っています
  • 赤字のときの繰戻し還付:中小企業者は引き続き、欠損金の繰戻しによる還付を使えます(制限する措置の対象外という扱いが2年延長されました)。赤字期の資金繰りの手段として押さえておく価値があります
  • グループ会社間の取引がある場合:50%以上の資本関係などがある会社から一定の役務提供等を受け、受け取った書類に対価の算定根拠がないときは、それを補う書類を作成・保存する義務が創設されました(令和8年4月1日以後開始事業年度の取引)。保存が適切でないことは青色申告の取消事由に該当し得ます。 グループ内で経費を配賦している会社は確認が必要です
  • 給与計算への影響:所得税の基礎控除などの見直しに伴い、扶養親族等の所得要件が58万円以下から62万円以下に変わります(62万円は給与収入ではなく合計所得金額です)。ただし源泉徴収税額表の改正は令和9年1月支払分からで、令和8年中の毎月の源泉徴収は従来どおり、精算は年末調整で行うことになります

この記事の要点

  • 少額減価償却資産は40万円未満へ。判定は資産を取得した日なので、令和8年4月1日をまたぐ期は同じ期の中で基準が混在する。20万円未満は一括償却資産との選択もあり、償却資産税の扱いが変わる
  • 賃上げ促進税制(中小)は教育訓練費の上乗せ廃止だけ。控除率15%・30%と子育て両立支援の+5%は維持。上乗せを見込んで節税を計算していた場合は見直しが要る
  • 設備投資は制度を選ぶ前に相談を。いま使える2制度は令和9年3月31日までに取得・事業供用が必要、即時償却は買う前の計画認定が必要、新制度は投資計画5億円以上が前提。買ってからでは間に合わない手続がある
  • インボイスの経過措置は70%へ。適用は課税期間の初日が令和8年10月1日以後から。一の取引先から年1億円超の部分は対象外
  • 防衛特別法人税は所得から500万円を引く制度ではない。基準法人税額から500万円を控除した残額に4%
  • 中小企業者等に該当するかは制度ごとの判定。従業員数や売上だけでは決まらない

出典


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