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YANAI TAX OFFICE ・ CHIGASAKI / SHONAN

補助金・助成金は「いつ」収益に計上する?──採択・入金でなく確定した時が原則

補助金・助成金を受け取ったとき、「採択された期の収益」「入金した期に計上」と考えていませんか。実は益金になるのは、その時点で受け取る権利と金額が具体的に確定したときです。中小法人の経営者に向けて、いつ収益計上するか、消費税や圧縮記帳の扱い、決算期をまたぐときの実務までを整理します。

なぜ「採択=今期の収益」ではないのか

補助金や助成金でもっとも多い誤解が、「採択の通知が来たから今期の収益」「入金があった期に計上」という考え方です。採択日や入金日で一律に判断するのは適切ではありません。見るべきは、その時点で請求権と金額が具体的に確定したかです。

法人税では、益金(税務上の収益)は資本等取引以外の取引に係るその事業年度の収益の額とされ(法人税法22条2項)、どの事業年度に計上するかは原則として権利確定主義で判断します。これは、収入を受け取る権利が法的に確定した時点で収益に計上する考え方です。

押さえたいのは、この判定を通知書の名称ではなく、その時点で法人が交付を請求できる権利と金額が具体的に確定したかで行う点です。「交付決定通知」「額の確定通知」という呼び名ではなく、通知の法的効果で見ます。

  • 交付決定によって請求権と金額が確定する制度なら、交付決定の時点
  • 交付決定額はあくまで上限で、事業完了後の実績報告・確定検査で最終額が決まる制度なら、その額の確定通知の時点(補助金等適正化法15条は、事業完了後に交付額を確定して通知すると定めています)

募集要項・交付要綱・交付決定通知・額の確定通知を一体で確認し、どちらの制度かを読み分けてください。

いつ益金になるか──申請から入金までの時系列

補助金の多くは次の流れで進みます。どの段階で金額が確定するかを、通知や書類で確認するのがポイントです。

段階内容収益計上との関係
申請・採択対象に選ばれる通常は未計上(名称でなく通知の法的効果を確認)
交付決定交付額などが決まる請求権と金額が確定する制度なら計上
実績報告・確定検査経費実績を報告・精算するこの手続で最終額が決まる制度はここまで未計上
額の確定通知交付額が最終確定する後から確定する制度はこの日で計上
入金補助金が振り込まれる計上済みなら未収入金を消し込む

交付決定で金額が固まる制度は、その交付決定の日を含む事業年度の益金です。いったん決めた上限のもとで事業を行い、経費実績に応じて後から交付額が確定する制度は、額が確定した日(実績報告後の確定通知など)を含む事業年度に計上します。どちらかは、募集要項・交付決定通知・確定通知を読み分ければ判定できます。

一部の給付金には特例がある(対象は限られる)

収益計上には、原則(権利確定)とは別に通達の特例がありますが、当てはまる範囲は限られます。

法人税基本通達2-1-42は「法令に基づき交付を受ける給付金等の帰属の時期」を定めています。対象は雇用保険法、労働施策総合推進法、障害者雇用促進法等に基づく給付金で、休業手当・賃金・職業訓練費などの補填を目的とするものです。これらは、休業・就業・職業訓練といった支給の原因となる事実があった事業年度の終了時に、交付額が未確定でも見積額で益金計上します(一定の奨励金等は支給決定日を含む事業年度)。

ここで列挙される法令は「等」を含む例示です。雇用調整助成金という名称だから適用、設備補助金という名称だから不適用、と名称だけで判定してはいけません。

また、一般の補助金は補助対象経費が発生しただけで当然に見積計上するものではありません。一方、2-1-42の要件を満たす給付金等は、交付額が未確定でも支給原因の事実が生じた事業年度に見積計上が必要です。個別制度に別段の定めや特殊な法的構成がある場合は、その制度を確認します。

補助金・助成金に法人税はかかる?──原則は益金、設備向けは圧縮記帳を検討

補助金・助成金は、法人税の計算上、原則として益金に算入されます(法人税法22条2項)。返さなくてよいお金を受け取ることは「無償による資産の譲受けその他の取引」に当たり、補助金だから法人税がかからない、ということはありません。そのうえで、何に充てるお金かによって扱いが分かれます。

種類の例法人税課税の繰り延べ消費税
機械・設備の購入に充てる補助金益金要件を満たせば圧縮記帳(法人税法42条)不課税
広告費・外注費など経費の補助金益金なし不課税
人件費・休業手当を補う雇用系の助成金益金(計上時期は前述の2-1-42を確認)なし不課税

人件費や休業手当を補う助成金は、固定資産に充てるお金ではないため圧縮記帳の対象になりません。ただし益金の計上時期は入金日とは限らず、2-1-42に当たる場合は支給原因となる事実が生じた事業年度に見積計上します。決算前に制度ごとの計上時期と見込額を確認し、納税額の見込みに織り込んでおくことが大切です。

経費補助型と資産取得型で処理が分かれる

計上時期を判定したら、次はその補助金が何にあてるものかで処理が分かれます。

経費補助型(人件費や広告費などの一部を補うもの)でも、補助対象経費と補助金収益の帰属年度が一致するとは限りません。経費はその経費自体の計上基準で、補助金収益は請求権と金額が具体的に確定した時点で計上します。実績報告後に額が確定する制度では、経費が先行し補助金収益が翌期になることがあります(これが決算期をまたぐときの核心です)。ただし前述の2-1-42に当たる給付金等は別で、原因事実の生じた事業年度に見積計上します。

資産取得型(機械や設備など固定資産の取得にあてる国庫補助金等)は、益金の帰属年度に全額を益金計上すると、まだ費用化されていない資産に先に課税されてしまいます。これを避ける制度が圧縮記帳です。なお、法人税法42条の「国庫補助金等」に当たるかは交付主体・財源・交付事務の裁量・使途で判定され、民間団体からの助成金が自動的に対象になるわけではありません。

反対に、「助成金」という名前でも対象になるものがあります。法人税法施行令79条は、障害者雇用促進法に基づき独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が交付する一定の助成金なども国庫補助金等に含めています。判定は名称だけで行わず、法人税法42条・法人税法施行令79条の国庫補助金等に当たるかを根拠法令・交付主体・財源などから確認したうえで、交付要綱上、固定資産の取得・改良に充てるものかを確認します。

圧縮記帳は減税でなく課税の繰り延べ

固定資産の取得にあてる国庫補助金等は、法人税法42条の要件——原則として事業年度末までに返還を要しないことが確定していること、交付目的に適合した固定資産を取得・改良すること、所定の経理と申告書別表13(1)の添付——を満たせば、圧縮限度額の範囲内で損金算入できます。

圧縮記帳は、圧縮限度額の範囲内で圧縮損を計上し、固定資産の帳簿価額をその圧縮額だけ減らす方法です。これにより益金の帰属年度の課税所得の増加を抑えられますが、その分だけ以後の減価償却費が小さくなり、課税は将来へ繰り延べられます。減税ではなく課税の繰り延べで、積立金方式もあります。

期末までに返還不要が確定していない場合は、特別勘定(法人税法43条)の計上を検討します。条件違反時の返還条項があるだけで直ちに返還不要が未確定になるわけではなく(法人税基本通達10-2-1)、適正化法15条の額の確定通知を受けたものは返還不要が確定したものに当たります。

青色申告との関係も整理しておきます。国庫補助金等の圧縮記帳(法人税法42条)は青色申告が要件ではなく、白色でも適用できます。一方、中小企業者等の少額減価償却資産の特例(租税特別措置法67条の5)は青色申告が要件で、対象金額は2026年4月1日以後に取得等する資産について40万円未満へ引き上げられました(それ以前は30万円未満)。似た「特例」でも要件が違うので混同しないようにします。

勘定科目は「雑収入」か「売上」か

補助金・助成金は本業の商品やサービスの対価ではないため、雑収入や「補助金収入」「助成金収入」など、本業の売上と区分できる科目で処理するのが一般的です。設備の補助金で圧縮記帳をする場合は、補助金を特別利益(国庫補助金受贈益など)、圧縮損を特別損失に計上する整理もあります。表示区分は、補助金の性質や金額の大きさ、継続して採用している会計方針に応じて判断します。

法人税の課税所得は、どの科目で処理しても変わりません。それでも区分するのは、次の2つを誤らないためです。

  1. 経営の数字がゆがむ:補助金を売上に混ぜると、売上高や営業利益が本業の実力より大きく見えます。前年比較や、金融機関が見る営業利益ベースの指標で、実態と違う判断をする原因になります。
  2. 消費税の集計を誤る:補助金を売上の科目に入れ、税区分まで課税売上のまま登録すると、消費税申告の課税売上高を過大に集計するおそれがあります。消費税を払い過ぎるだけでなく、基準期間の課税売上高を使う判定──簡易課税を選べるか(5,000万円以下)、インボイス未登録の会社が免税事業者になるか(1,000万円以下)──の資料まで誤ります。勘定科目とは別に、税区分は取引の実質で確認してください。

月次の試算表で補助金がどこに入っているかの見方は、月次試算表の見方でも整理しています。

補助金・助成金の消費税

補助金・助成金は、原則として消費税の課税対象外です(不課税取引)。消費税は対価を得て行う取引にかかりますが、補助金は政策目的の交付で反対給付がなく、対価性がないためです。雇用調整助成金のように、休業手当などの支出を前提に手続をして受ける助成金も、資産の譲渡等の対価に当たらず不課税です(消費税法基本通達5-2-15)。

これは消費税法6条の非課税取引とは別で、非課税売上ではないため、課税売上割合の分母にも分子にも算入しません(国税庁タックスアンサー No.6157・No.6209)。freeeの記帳では、消費税区分を通常「対象外」とします。

ただし、国・自治体等との契約に基づいて業務を行い、その役務提供の対価として受け取る委託料は、補助金という名称の給付とは異なり、原則として消費税の課税対象です。名称が「補助金」「委託費」のどちらでも、政策目的の給付か業務の対価かを交付要綱や契約書で確認し、会計上の科目と消費税の区分をそれぞれ判断してください。

補助金で支払った経費・設備の消費税は控除できる?

補助金そのものは不課税ですが、補助金を財源にして支払った経費や設備の消費税は、原則課税(一般課税)で仕入税額控除の要件を満たしていれば、補助金で賄った部分も含めて通常の仕入税額控除の計算に入ります。実際の控除額は、課税売上割合や控除方式(個別対応方式・一括比例配分方式)、帳簿・請求書等の保存要件によって変わります。なお、免税事業者は仕入税額控除ができず、簡易課税の会社は売上の消費税にみなし仕入率を掛けて控除額を計算するため、支払った消費税を個別に積み上げて控除するわけではありません。

あわせて交付要綱も確認してください。補助対象経費に消費税等を含めて交付を受けた場合、確定申告後に、補助対象経費に対応する消費税等仕入控除税額を所定の方法で計算し、報告や返還を求められることがあります。対象者・計算方法・返還額は交付要綱によって異なります。税務上の仕入税額控除とは別に行う、補助金制度側の手続です。

例外は、一般社団法人・一般財団法人などの公益法人等や、人格のない社団等です。原則課税で、補助金などの「特定収入」の割合が5%を超えると、特定収入で賄った仕入れの消費税を控除額から差し引く調整が必要になります(消費税法60条4項、国税庁タックスアンサーNo.6495)。株式会社・合同会社などの一般の事業者には、この調整はありません。

決算期をまたぐ場合とfreeeでの記帳

特に注意したいのが、申請から入金までが決算期をまたぐケースです。「入金した期に計上」と考えていると、本来は前期の益金を翌期に計上してしまい、修正申告や税額の誤りにつながります。期末前に交付決定通知・募集要項・実績報告書で金額確定の日を押さえ、当期か翌期かを確定させておきます。

freee 会計での記帳は、金額が確定した時点で未収入金を借方、雑収入などを貸方に立て、入金時に未収入金を消し込むのが基本です。圧縮記帳を使うときは、補助金収入と固定資産圧縮損の両方を計上し、別表13(1)など必要な明細書を添付します。仕訳の型は補助金の性質で変わるため、交付決定通知や確定通知を手元に置いて判定してから登録するのが安全です。なお、freee の画面構成やメニュー名は改訂され得るため、操作は最新の画面で確認してください。

この記事の要点

  • 補助金・助成金の益金計上時期は、通知書の名称ではなく、その時点で交付を請求できる権利と金額が具体的に確定したかで判断する(法人税法22条2項)
  • 交付決定で確定する制度は交付決定時、実績報告後に額が確定する制度は確定通知時(補助金等適正化法15条)に計上する
  • 通達2-1-42の特例は雇用調整助成金など法令に基づく給付金が対象。名称だけで適用・不適用を決めず、一般の補助金は原則どおり権利確定で判定する
  • 補助金・助成金は原則として益金に算入され法人税がかかる。固定資産の取得にあてる国庫補助金等は法人税法42条の要件を満たせば圧縮記帳で課税を繰り延べられる(減税ではない・青色申告は不要)。返還不要が未確定なら特別勘定(43条)を検討
  • 勘定科目は本業の売上と区分する。補助金は消費税の不課税で課税売上割合に算入しないが、補助金で支払った経費・設備の消費税は、原則課税で要件を満たせば通常どおり仕入税額控除の計算に入る(交付要綱の返還手続も確認)

出典


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