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【2026年10月】インボイス「2割特例」終了、あなたの会社の負担はいくら増える?

インボイスの「2割特例」が令和8年(2026年)で終わる。ただし「2026年10月に一気に負担が増える」という理解は半分正しく半分間違っている。個人と法人で終わる時期が違い、経過措置は令和8年度改正で逆に緩和され、個人事業者には新しい受け皿もできた。本稿は2割特例を使ってきた小規模事業者と、免税事業者から仕入れている会社の双方に向けて、自社の負担増を数字で押さえる。

まず押さえる3つの論点

「2割特例が終わる」という見出しだけが先行し、次の3点が混ざって語られがちである。

  1. 2割特例(自分の納税額の話) ── いつ終わるかは個人と法人で違う
  2. 免税事業者等からの仕入れの経過措置(取引先の話) ── 令和8年度改正で「80%→50%」ではなくなった
  3. 3割特例(個人事業者だけの受け皿) ── 令和9年・令和10年分の新設措置

1つ目は「自分が納める消費税」、2つ目は「免税事業者から仕入れたときに控除できる割合」で、まったく別の制度である。ここを分けて考えるのが第一歩になる。

論点1:2割特例はいつ終わるのか(個人と法人で違う)

2割特例は、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった人が、納付税額を売上にかかる消費税(売上税額)の2割で済ませられる特例である。適用できるのは「令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間」とされている(出典:国税庁 2割特例の概要)。

ここがつまずきやすい。「令和8年9月30日を含む課税期間まで」なので、終わる時期が事業形態で変わる。

事業形態2割特例が使える最後具体的に
個人事業者令和8年分(2026年分)2027年に行う2026年分の確定申告まで(令和5年10月登録の場合、登録初年から計4回)
法人令和8年9月30日を含む課税期間例:3月決算法人なら令和9年3月期の申告まで

つまり個人事業者は「2026年9月で即終了」ではなく、2026年いっぱい(=2027年の申告)まで使える。一方で法人は決算期によって最後のタイミングが異なるため、自社の課税期間で確認する必要がある。

論点2:経過措置は「80%→50%」ではない(令和8年度改正で緩和・延長)

ここが最も誤解されている。免税事業者など(インボイス発行事業者以外)から仕入れた場合、本来は仕入税額控除ができないが、一定割合を控除できる経過措置がある。改正前は「令和8年10月から50%」の予定だったが、令和8年度税制改正で適用期限が2年延長され、割合も見直された(出典:国税庁 令和8年度税制改正特集(インボイス制度))。

期間控除できる割合
〜令和8年9月(2026年9月)まで80%
令和8年10月〜令和10年9月70%
令和10年10月〜令和12年9月50%
令和12年10月〜令和13年9月30%
令和13年10月(2031年10月)以降0%(控除不可)

ポイントは2つ。2026年10月からは「50%」ではなく70%であること、そして完全に控除できなくなるのが令和13年(2031年)10月まで先送りされたことである。「免税事業者からの仕入税額控除は2026年10月から50%」という解説をいまだに見かけるが、これは改正前の旧情報なので前提を更新したい。免税事業者と取引している会社にとっては、当初想定より負担増がなだらかになったことになる。

ただし、同じ令和8年度改正では上限の引き下げも入った。同一の免税事業者等からの課税仕入れ(税込)が、その年または事業年度で1億円(改正前は10億円)を超える場合、その超えた部分には経過措置(70%などの控除)が使えない。令和8年10月1日以後に開始する課税期間からの適用で、特定の仕入先に発注が集中している会社は確認しておきたい。

論点3:個人事業者には「3割特例」という受け皿がある

2割特例の終了に合わせ、個人事業者向けに3割特例が新設された。インボイス発行事業者の登録で免税から課税になった個人事業者が、令和9年分・令和10年分(2027年・2028年分)の申告で、納付税額を売上税額の3割にできる措置である(出典:同 令和8年度税制改正特集)。主な要件は次のとおり。

  • インボイス発行事業者の登録により、免税事業者から課税事業者になった個人事業者であること(法人は対象外
  • その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であること

重要なのは法人にはこの受け皿がない点である。法人は2割特例が終わったら、原則課税(本則)か簡易課税のどちらかで計算することになる。個人事業者は2割→3割と2年の猶予が挟まるが、法人は次の課税期間からいきなり通常計算に移る。

自社の負担はいくら増えるか(試算フレーム)

2割特例を使ってきた事業者の納税額は、計算方法によって次のように変わる。課税売上(税抜)800万円・売上税額80万円のサービス業(簡易課税の第5種・みなし仕入率50%)を例にする。

計算方法納付税額の目安適用できる時期
2割特例80万円 × 20% = 16万円令和8年分まで
3割特例(個人のみ)80万円 × 30% = 24万円令和9・10年分
簡易課税(第5種)80万円 × 50% = 40万円特例終了後
原則課税(本則)売上税額 − 実際の仕入税額随時

同じ事業者でも、2割特例の16万円から簡易課税の40万円へ移ると納税は2.5倍になる。個人事業者は3割特例の24万円というワンクッションがあるが、法人にはそれがない。

簡易課税のみなし仕入率は業種で異なる(卸売90%・小売80%・製造業等70%・その他60%・サービス業等50%・不動産業40%)。本則と簡易のどちらが有利かは、実際の課税仕入れの多寡で逆転するため、自社の仕入構造で試算するのが欠かせない。仕入が少ない業種ほど簡易課税が有利になりやすい。

今夏〜来期にやるべき3手

制度が動く前に、次の順で手を打っておきたい。

  1. 取引先のインボイス登録状況を棚卸しする 免税事業者からの仕入れがどれだけあるかで、経過措置(70%控除)の影響額が決まる。主要な仕入先の登録番号の有無を一覧化しておく。
  2. 本則・簡易・特例の有利判定をする 2割特例が終わった後、本則課税と簡易課税のどちらが有利かを試算する。簡易課税を選ぶなら、適用を受けたい課税期間の開始前までに「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要になる点に注意したい。
  3. 資金繰りシミュレーションを更新する 納税額が上がる前提でキャッシュフロー表を引き直す。特に法人は3割特例の猶予がないため、終了の翌期から納税額が跳ねる影響を早めに織り込む。

この記事の要点

  • 2割特例の終わりは個人と法人で違う。個人は令和8年分(2026年分)の申告まで、法人は令和8年9月30日を含む課税期間まで
  • 免税事業者等からの仕入れの経過措置は令和8年度改正で見直され、2026年10月からは「50%」ではなく70%。完全終了は令和13年(2031年)10月に延長された
  • 個人事業者には令和9・10年分の「3割特例」という受け皿があるが、法人にはない
  • 2割特例(16万円)→簡易課税(40万円)で納税は2.5倍になり得る。本則と簡易の有利判定と簡易課税選択届の提出期限に注意

出典


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