freeeの自動登録ルールは何個作るべきか──件数より先に決める線引き
「同じ支出が月によって違う科目に入っている」。この原因は、単にルールが足りないからとは限りません。多くの場合、どの明細をルールに任せ、どれを人が判断するかという基準が共有されていないことにあります。
ルールの作り方そのものはfreee公式ヘルプに詳しく、ここで繰り返しません。この記事で扱うのは、その手前の判断です。どこまで自動に任せ、どこから人が見るか。 月次決算を3営業日で締めるの前提条件として挙げた「自動登録ルールの整備」の中身にあたります。
設計を縛る仕様は3つだけ
条件と処理の設定項目を一つずつ覚える必要はありません。設計判断が変わる仕様だけを押さえます。
1つ目。照合条件に使えるのは、収支区分・取引口座・取引内容・金額です(クレジットカードならカードラベルも)。取引先を条件にすることはできません。
取引先は「条件に一致したとき行う処理」の側にある項目で、判定には使えません。そのため実務では、口座や金額で範囲を絞ったうえで、明細に印字される文字列を識別子として使うことになります。複数のルールが合致するときは優先度が効きます。
文字列に頼る以上、印字が変われば外れます。公式ヘルプも2つの失敗例を挙げています。取引先が社名変更して「ツバメ(カ」が「フリー(カ」になりルールが外れた例と、「ツバメ」で部分一致させたために、つばめ不動産の家賃ルールがカーリースつばめの支払まで拾ってしまった例です。部分一致を使うなら、口座や金額で十分に絞るのが事故を防ぐ最低限の原則です。
2つ目。税区分まで設定できます。ただし税率の表記がない税区分は、置く場所で意味が変わります。
見落とすと痛い仕様です。freeeのヘルプはこう書いています。
「取引」「振替伝票」など仕訳に直接付与された場合、税率表記がない税区分は「税率5%」を意味します。一方「取引テンプレート」や「自動登録ルール」などの設定画面において、税率表記がない税区分は「仕訳の発生日に応じた税率を自動付与」することを意味します。
対象取引の税区分が継続して同じで、発生日に応じた税率の自動付与を意図するなら、表記のない税区分が候補になります。同じ表記を取引へ直接付けると5%になる点も含めて、置く場所で挙動が違うことを知っておいてください。ただし、税率表記をなくせば税務判断そのものが不要になるわけではありません。 軽減税率か標準税率か、非課税か対象外か、適格請求書等の確認が要るかは別の判断です。
3つ目。ルールを作っても、同期済みの明細には自動では遡りません。そして成績の悪いルールは無効化されます。
自動登録の処理は明細を同期したときに走ります。後から作ったルールを既存の明細に効かせたい場合は、対象を確認したうえで手動の一括適用を行います。さらに公式ヘルプは、「1年以上更新されておらず、正答件数0、推測件数10以上」のルールは無効になると明記しています。
この2つを合わせると、「とりあえず作っておく」ルールは死蔵在庫になりやすいということです。自動では過去に効かず、当たらないまま放置すれば無効化される。作る動機が「念のため」なら、作らないほうがよいことになります。
「作る/作らない」ではなく3段階で決める
ここが本題です。線引きは二択ではありません。自動登録まで任せるか、推測にとどめるか、人がゼロから判断するかの3段階で決めます。
| 段階 | 任せる範囲 | 向いている明細 |
|---|---|---|
| 登録 | 取引まで自動で作る | 条件が狭く、処理が一意に決まる |
| 推測 | 内容を埋めて候補を出すが、確定は人 | 処理はだいたい決まるが、証憑や金額の確認が要る |
| 人 | ルールを作らない | 事実確認をしないと処理が決まらない |
登録まで任せてよいのは、反復性があり、同じ条件なら同じ処理になる明細です。ここに、年間の処理件数、誤登録したときの影響、条件が変わりやすいか、確認にかかる手間を加えて判断します。頻度だけでは決まりません。年1回でも定型性が高ければ推測ルールが有効な場合があり、毎月発生しても判断が変わるものは自動登録に向きません。
導入の順序も、いきなり登録に振らないほうが安全です。まず推測で作り、正答の実績を見てから登録に切り替える。freeeはルールごとに正答件数と正答率を表示するので、切り替えの判断材料になります。
そして件数は目標ではなく結果です。この基準で組んでいくと、必要な数は会社によって大きく変わります。当事務所が支援してきた範囲でも、稼働しているルールの数は一桁台の会社から数百件規模の会社まで幅がありました。差を生むのは規模ではなく、事業の反復構造です。決済手段がいくつあるか、仕入先が何社に固定されているか、売上の入り方が何パターンか。ここが単純な会社は少ない数で足り、複雑な会社は多くなります。
これは最適な件数を示す統計ではありません。件数が多いほど整備が進んでいる、という意味でもありません。他社の設定をそのまま持ち込んでも合わないのは、この反復構造が会社ごとに違うからです。
自動登録まで任せないもの
当事務所が原則として登録まで任せないのは、次の類です。いずれも「ルールを作らない」ではなく、「確定は人が行う」という意味です。
- 役員が支払った明細、私的利用の可能性があるもの:事実確認の前に費用へ自動登録しません。件数が多い場合は、役員借入金・役員貸付金などの確認用の科目へ推測させ、証憑を見てから確定する方法があります
- 金額だけでは処理を決められない取引:備品の購入では、金額に加えて資産の内容や取得の単位、会社の経理方針、適用する税務上の取扱いを確認する必要があります。金額条件だけで費用か資産かを確定させません
- 税区分や適格請求書等の確認が取引ごとに要るもの:銀行明細の文字列だけで確定登録しません。取引先を条件にできない以上、明細の印字から免税事業者かどうかを判定することはできません。条件が安定した継続取引でも、まず推測にとどめ、請求書等を見てから確定します
- 決済代行サービスからの入金:すでに売上を計上している運用なら、入金は売掛金や未収入金の消込であって、再び売上に立てると二重計上になります。手数料が控除された金額で入る、複数日分がまとまる、といったこともあるため、売上計上の運用と入金の内訳を確認せずに一律で売上登録するルールは作りません
- 複数月分がまとまった入出金、期をまたぐ前払・未払:1本の明細を分ける判断が要るものは確定登録しません。ただし家賃や保険料のように定型的なものは、推測にとどめる設計はあり得ます
共通しているのは、事実を確認しないと処理が決まらないという点です。
作りすぎた会社で起きること
ルールを増やす方向に進むと、次の順で崩れます。
まず、似た条件のルールが増えて競合します。 直接の原因は科目の数ではなく、取引内容・口座・金額といった条件範囲の重なりです。優先度で順番を決められますが、優先度の高い「推測する」ルールが当たると、その下にある「登録する」ルールは実行されません。自動登録されない明細が毎月残るのに、原因が競合だと気づきにくい状態になります。
次にマスタが荒れます。 ルールをCSVでまとめて取り込むとき、freeeは項目によって挙動が違います。勘定科目・税区分・取引口座は登録済みの名称と一致していないとエラーになりますが、取引先・品目・部門・メモタグは、一致しない場合に新しく作られます。つまりタイプミスがエラーにならず、静かにマスタが増えます。同じ支出先が複数の取引先に分かれると、取引先別の集計や検索の結果が分散し、自動登録した後の処理も揃わなくなります。
最後に、使われないルールが積み上がります。 無効化されるまでの間は、正答の実績がない推測が表示され続けます。そして一度削除したルールは復元できません。公式ヘルプも、複数のルールを削除する前にバックアップとしてエクスポートしておくことを勧めています。
整備が済んだ月初はどうなるか
ルールが効いている会社の月初は、判断が要る明細が中心に残っている状態になります。数が少ないので、見るべきものが埋もれません。
ただし、残件が少ないことだけでは十分ではありません。 自動登録された取引も定期的に抽出して、誤った登録や、条件が実態に合わなくなっていないかを確認します。社名の変更、口座や決済手段の変更、税区分や適格請求書等の状況が変わったときは、その都度ルールを見直す対象になります。
逆に、月初に大量の明細を上から処理しているなら、ルールの不足だけでなく、対象外とする明細の線引き、証憑の回収、同期、担当の分担まで含めて見直す余地があります。締めの工程全体での位置づけは月次決算を3営業日で締める、締めた数字をどう読むかは月次試算表、社長はどこを3分で見るべきかで扱っています。
この記事の要点
- 線引きは「作る/作らない」の二択ではなく、自動登録まで任せる/推測にとどめる/人が判断するの3段階で決める。まず推測で作り、正答の実績を見てから登録に切り替えるのが安全な導入順序
- 登録まで任せてよいのは反復性があり、同じ条件なら同じ処理になる明細。加えて件数・誤登録の影響・条件の変わりやすさ・確認の手間で判断する。頻度だけでは決まらない
- 件数は目標ではなく結果。稼働するルール数は一桁台から数百件規模まで幅があり、差を生むのは規模ではなく事業の反復構造。件数が多いほど整備が進んでいるという意味ではない
- 取引先を条件にはできない。口座や金額で範囲を絞ったうえで明細の文字列を識別子に使う。部分一致は広すぎると別の取引先を巻き込む
- 税率表記のない税区分は、自動登録ルールでは「発生日に応じた税率」、取引に直接付けると「5%」。ただし税率表記をなくしても、軽減税率や適格請求書等の判断が不要になるわけではない
- 同期済みの明細には自動では遡らない(必要なら手動の一括適用)。1年以上更新なし・正答0・推測10件以上のルールは無効化される
- CSVインポートでは取引先・品目・部門・メモタグはタイプミスでも新規に作られる(勘定科目・税区分はエラー)。マスタが分かれると集計と処理が揃わなくなる
出典
- freeeヘルプセンター 明細の自動登録ルールを設定する
- freeeヘルプセンター 自動登録ルールで誤って推測される場合、どうすればいいですか?
- freeeヘルプセンター 税率が記載されていない税区分について
- freeeヘルプセンター 自動登録ルールと勘定科目の設定がバッティングし自動登録されない際の対処法
freeeの画面構成やメニュー名、仕様は改訂され得るため、操作は最新の画面でご確認ください。
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